春日山原始林のカシノナガキクイムシ被害の様子と木から噴出する樹液の様子
奈良の主力観光地である奈良公園を遠くから眺めると若草山がとても目立つ。風景の主役的存在だ。実は奈良公園の裏の山は意外と知られていないのだけど、実は世界遺産の一部となっている。聖域として信仰の対象であるため昔から人の手が入っておらず貴重な森なのだ。そして中には春日奥山ドライブウェイが通っていてその道を歩くことができ、私も奈良公園〜春日奥山〜滝坂の道〜新薬師寺という道を歩いたりする。
ここ数年、奈良県でカエンタケが発生というニュースを秋になると毎年見るようになった。その現場の1つがこの春日山原始林。さきほど書いた遊歩道にも生えてくるらしい。去年のニュースと今年のニュースを比べると発生範囲がどうやら広範囲になっているようだ。警告の掲示も増えていた。
若草山麓の月日亭付近の警告文。
ここでは同時にナラ枯れという問題も起こっている。カシノナガキクイムシという虫が多く発生し樹木に穴を開け内部に棲むことが原因となり、ナラ菌に木が感染し通水障害により木が枯れてしまうという問題だ。カエンタケはこのナラ枯れを起こした木に発生しやすいという説があり、ナラ枯れの拡大とカエンタケの発生には相関関係があるという話は春日山原始林の様子を見ても頷けるものがある。
捕殺トラップ。キャンプファイヤーの準備中の光景ではない。
ビニールが撒かれた樹木。道沿いだけでなく奥のほうの樹木にも施されている。
花山 地蔵の背の横の樹木にも何かヘンテコなものが。そういや地蔵の背という名前も不思議だね。背ってなんだろう?
これはカシナガトラップらしい。よく取れるのだとか。
原始林の遊歩道を歩くとそこら中の木にビニールが撒かれていたりトラップがあったりと対策に苦心している様子が伝わってくる。管理対策されている方はかなり大変だろう。ほんとに広範囲の木に虫が食った痕が見られる。手のつけようがなくて対策が追いつかないんだろうなあ。現実的に考えて山の麓から山頂まで無数にある全ての木をケアしないといけないというのは予算がどれくらい付いているのか知らないけど、よほどお金をかけないと無理な話だ。
そんな中、カシノナガキクイムシが脱出したと思われる穴から樹液が吹き出してる光景を見つけた。この動画はiPhoneで撮影したのだけど音がちゃんと録れてない。この木の横を通った時に何か変な音がするなと立ち止まって探してみるとこの状態だった。樹液に集まる昆虫を採集する人にはお馴染みの音らしいけれど、初めて聴くとびっくりするね。不思議な光景。
いろんな樹木がこんな感じで木くずを落としていた。
ちなみに場所は地獄谷石窟仏の近辺。首切り地蔵から地獄谷石窟仏までへの道はあまり対策がされてないっぽくて、歩道の横の木がみんな根本に大量の木クズを落としていた。この森はこれからどうなるのだろうか。
地獄谷石窟仏。森の中にいきなり現れる。奈良時代のものらしい。
首切り地蔵。荒木又右衛門に試し斬りに使われたというエピーソードをもつ。滝坂の道にある鎌倉時代作といわれる地蔵。